誤解を恐れずに書きます。
私、昔はモーツァルトが大好きでしたが、
今は演奏に対してとっても苦手意識が強いのです。
彼の作品を演奏するのは、年齢を重ねていくうちに、どんどんと怖くなり、難しさを痛感するようになってきたからです。
それに「モーツァルトはこう演奏しなさい」みたいな呪縛がいろいろとありましてねえ。
なかなか自由になれない自分自身がいるようなのです。
ただ、例外的に、彼の作品で気に入っている曲がいくつかあります。
それは昔に弾いたことのある曲なのですが、
その時の思い出が余程よかったのでしょうねえ、また演奏したくなっているのです。
今日はその中の1曲のことを語ります。
曲名は彼が書いたバスアリア「この麗しい御手と瞳のために」k.612
(イタリア語タイトルは Per questa bella mano)
この曲、バスのアリアですが、なんとコントラバスソロのオブリガートが入るのです。
ですから、事実上、この曲はソリストが2名です。
昔、2006年のいわゆるモーツァルトイヤー(生誕250周年でしたからね)で、ピアノ伴奏版で弾いたのですけれども、
この時の演奏が忘れられなくて、いい思い出になっています。
曲の詳しい解説は省略しておいて、
演奏上、極めて難しい問題があります。
「それ、チューニングの問題でしょ」との問いかけは、なかなかよく事情をご存知の方ですね。
それもそうなのですけれども、大きな問題は「音量」なのです。
私が2006年に弾いた場所は極めて狭い空間で、それもお客様は超満員の狭苦しい状況でした。
バス歌手とコントラバスの音量のバランスなどピアノ伴奏版ということもあって、まるで気にしなかったのですけれども、
これが原曲のとおりオーケストラがバックだと、コントラバスのパッセージはとっても聞こえにくいことに。
オーケストラが音量を抑えたとしても、バス歌手とのアンバランスな音量の差は解消されず。
これ、どうしたらいいのか?
答えが明確にあるわけではありませんが、
先日、こんな演奏をYouTubeで見つけました。
貼り付けておきますが、この曲の演奏は46分からです。
コロナ禍の状況だからこそ産まれた演奏内容ですね。
私が懸念していたソリスト同士の音量バランスは、かなり改善されていて、
(ただ、ひょっとしたら、録音の技術によることもあるかも?)
聞いていて気持ちがいいです。
古楽器オーケストラによる演奏ですが、これはモダンな楽器を弾いている私にも案外いいヒントとなる演奏と思いました。
面白い解釈も垣間見えましたからね。
こんな音楽を聴くから、また演奏したくなってしまうのですよ。
ということで、自宅でひっそりと練習をしておきます。