昨日、フィギュアスケートのニュースで話題になった曲、
いわゆる「G線上のアリア」
まさかクラシック音楽の曲名がTwitterのトレンドにも上がったなんてことは極めて珍しいことなので、
今日はとことん「G線上のアリア」を語ります!
まず、作曲者はヨハン・セバスティアン・バッハ。
ところが、バッハは「G線上のアリア」なる曲は書いていません。
その中の第2曲「Air(エール)」は弦楽合奏のみで演奏されるもので、
この第2曲をドイツのヴァイオリニストのアウグスト・ウィルへルミがヴァイオリン独奏+ピアノに編曲したものに付けられた通称が「G線上のアリア」ということ。
原曲の調性がニ長調なのに対して、「G線上のアリア」はハ長調。
そして、ヴァイオリン独奏は一番低い弦であるG線だけで演奏しなければならないという決まりがありまして、
他の弦は使用不可なのです。(譜例を参照)
譜例にあるsul G は「G線で弾くこと」との指示。
ちなみに、私がこの曲をコントラバス独奏で演奏の際、
昔はソロチューニングを使用しての演奏が多かったので、
コントラバスの第1弦であるG線はA線と長2度高く調弦されることに。
従って「A線上のアリア」となっていましたが、
現在では普通のオーケストラチューニングを採用しての演奏がほとんどなので、
通称通りに「G線上のアリア」になります。
ところで、いろいろと気になることがあります。
まずは曲名の発音。
まずもって「じーせんじょうのありあ」と発音するものと思われますが、
たまに「げーせんじょうのありあ」と聞かれることも。
Gをドイツ語読みすると「げー」となりますからねえ。
まあ、作曲者がドイツ人ですから、そこを採用したい意図が見え隠れしていますが、
これは一般的には普及しない発音となるでしょう。
原曲の演奏、勿論、これまでにもたくさん経験してきました。
ただ、過去に演奏してきた回数のかなりの割合で、コントラバスパートはスラーのパッセージを除いて、Pizzicato奏法で弾くことが多かったのです。
バッハの指示がなにもないにも関わらず。(譜例を参照)
「なんでそう弾くんだろう?」
何度も疑問に思ったのですけれども、
「いや、こう弾くものと決まっている」
「断然、Pizzicatoの方がいい」という圧倒的な意見の前に、
小心者の私は逆らうことなく、慣習通りに弾いていました。
でも、いろんな演奏がありまして、
きちんと弓で全部弾いているケース、
繰り返しによって弓とPizzicatoを使い分けるケース、
弓で弾く人とPizzicatoで弾く人を混ぜるケース、
なんかを私は見たことがあります。
常々思いますが、「こうあらねばならない」みたいなものがあまりにも強すぎることを、私は最近嫌う傾向があります。
いろんな可能性があってもいいかもしれないなあと。
最近の私、演奏上も保守的なスタイルはなくなってきたかなあと思っています。
いろいろと実験をしてみてもいいじゃないですかねえ。
そこで、こんな演奏動画を見つけましたので、貼り付けておきます。
繰り返しは前半も後半も行い、
その際に第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの楽譜も入れ替えるというもの。
コントラバスも弓とPizzicatoを繰り返しの度に入れ替えるというもの。
こんな演奏もあっていいと思います。
次に演奏する機会があって、練習で発言できるポジションにあったら、
勇気を持って提案をしてみようかな?